桜のトンネルと物語の扉
― 春に読みたい1冊とともに歩く ―
喜木凛
2025.04.12
読者限定
春の風が心地よく吹く、週末の午後。今年も地元の通りに、桜のトンネルができました。
この日は、夫と娘と三人でお散歩がてら、スターバックスに立ち寄ることに。満開の桜を眺めながら、そっと一冊の文庫本をバッグにしのばせて――今日の#読書さんぽのお供は、伊坂幸太郎さんの『重力ピエロ』です。
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📚「春が、二階から落ちてきた。」
『重力ピエロ』を初めて読んだのは、もう何年も前のこと。でも、春になるとふとこの物語を思い出したくなります。
冒頭の一文。
「春が、二階から落ちてきた。」
『重力ピエロ』伊坂幸太郎(新潮文庫)
この奇妙で詩的な始まりが、満開の桜と重なる瞬間があります。桜の花びらが、空からはらりとはじけて、私たちの足元を静かに彩っていく。
物語の中では、家族のつながり、暴力の記憶、再生の兆し――重たいテーマが扱われているのに、なぜか読後感は軽やかで、あたたかい。この感覚こそ、春に読みたくなる理由なのかもしれません。