春の終わり、花の名をたどるさんぽ道

地元を歩く、読書さんぽより
喜木凛 2025.04.19
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春の海 ひねもす のたりのたりかな
与謝野蕪村


「ひねもす」は“いちにち中”という意味。のんびりとした春の余韻が感じられる言葉です。

散りゆく桜の下、娘と歩く道すがら、私たちはそんな“のたりのたり”とした春の時間を、草花の名を通して味わいました。花の名前って、どこか“ことば”に似ていませんか?声に出して呼ぶだけで、誰かと心が近づくような、不思議なあたたかさを持っています。

今日は、地元の街を歩きながら出会った草花と、それにまつわる本たちをご紹介します。やさしい“ことば”の種が芽吹くような、読書さんぽの時間をどうぞ。

2歳の娘と一緒に花の名前をたどった春の記録。ことばが芽吹いていくような、小さな日々のエピソードをそっと綴ります。

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🕊1. 清明(せいめい)

地元の通りの並木道、足元には小さなスミレの花がさいていました。二十四節気では、4月5日から今頃は清明(せいめい)。たくさんの花が咲き、鳥たちも歌い出し、すべての生命がはつらつと輝く時季です。中国では春の色を青としていたそうです。「青春」ですね。ちなみに夏は朱、秋は白、冬は玄(黒)。心の中は、一生「青春」でいたい……。そのためにも、この季節を目一杯あじわいたいです。

ここでご紹介したいのは、こちらの書籍。『花と短歌でめぐる 二十四節気 花のこよみ』(俵万智)です。

二十四節気を勉強したいと思いつつ、なかなか覚えられずにいたのですが、花の名前も一緒に載っているこちら本で、グッと身近に感じられます。

二十四節気をめぐりながら、季節ごとの花をテーマに綴られる短歌とエッセイ。春に咲く草花の名にふれながら、俵万智さんの言葉が、時間の流れに静かに寄り添ってくれます。

季節の終わりに、やさしく背中を押してくれる一冊です。

🌿2. 足元のたんぽぽと『タンポポのお酒』(レイ・ブラッドベリ)

歩道のすき間に咲く、たんぽぽ。鮮やかな黄色に目をとめると、ふとページをめくりたくなるのが、レイ・ブラッドベリの『タンポポのお酒』。

子ども時代の“夏のはじまり”を描いたこの物語は、春の終わりにこそ読みたい、甘く切ないノスタルジーに満ちています。

あたたかい季節が少しずつ近づいてくる今、未来へつながる記憶の種として手にとってみてはいかがでしょうか。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、820文字あります。
  • 👧娘とことばを拾う、草花さんぽの日々
  • 📘『子どもと一緒に見つける 草花さんぽ図鑑』(永岡書店)
  • ☀️春の終わりに拾ったことばたち
  • 💬おわりに|ことばの芽吹きを、親子で

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